現在、不登校の児童生徒数は34万人を超え、過去最高を更新しています。不登校になった理由を文部科学省が委託調査したところ、「無気力・不安」が51.8%で一番多くなっています。そこで、先日読んだ書籍『無気力症』を紹介し、備忘録として記録しておきたいと思います。
無気力症の5つのタイプとは
著者は様々な無気力状態をわかりやすく5つに分類しています。
急性無気力
- 心理的に傷つけられた「無気力」
- 親がものわかりやよく、平和で温かいホームの中で育った人間が被害者になりやすい
- 子どもの感情を度外視し、無知で荒々しい親に育てられた人間が加害者になりやすい
誰かに心理的に傷付けられ「無気力」になった状態で、急性と慢性の二種類があると言われています。
慢性無気力
- 家庭環境の中で、無意識に頑張りすぎている
- 学校環境に適応できない
- 慢性無気力は一種の休戦状態である
特別な家庭環境で育った子どもは、家族など身近な人間が思っているよりも多くのエネルギーを消耗してしまっています。身近な人間ほど、そうはとらない、何もしない駄目人間になってしまったと嘆くだけの場合があると言います。
反抗的無気力
- 非行など問題行動に走る
- 子どもの知能を理解していない
- 反抗的問題行動の前には必ず無気力状態があり、それがエスカレートして顕在化する
子どもの行動が悪くならない程度に、上手にサボることのできる能力も大切ですし、若いエネルギーを発散できるよう、「知育偏重」から「知・情・体」のバランスが取れた教育がより必要になっていると言われています。
生理・病質的無気力
- 自律神経の調子が悪くなっている
- 生真面目で粘り強い人ほど「ねむり呆け症候群」になりやすい
- 親の干渉過剰が病的無気力を生む場合もある
生理・病質的無気力は休息をとったり、健康的な生活を送ることで早期に回復する場合もありますが、神経質で内閉的な気質をもった子が過干渉の養育者と接しているうちに無力型の人間になっていくとも言われています。精神病などの精神疾患は様々な種類に分類されますが、そのどの症状にも「無気力」はついてまわるので、病質的だと思われる場合には医療機関を受診することも必要であると感じました。
実存的無気力
- 無気力状態は自己主張
- 親の損得勘定で子どもをのみ込んではいけない
- 子どもに強制していた心理的枠組みに気がつけば、子どもの自尊と自律は取り戻せる
哲学者のセーレン・キルケゴールは「自分に対し自分が正直である」と言っていますが、子どもたちは無気力を通じて自己主張し、親の敷いたレールから出て、確かに自分がそこに実存しようと、もがいているのではないかと感じました。
無気力はいけないことなのか
ー親や教師は「無気力」を極端に嫌う。待てないのだ。なぜなら、「無気力」が心身の休息であることに気づかないからである。大人達は自分達の設定した枠組の中で子どもが素直に従ってくれることをよしとしている。それだけに怠けや無気力を自分達に対する反発であり反抗だと早合点してしまうのである。ー『無気力症』
著者はこのように述べており、子どもの無気力は必ず回復するから、それまで周囲の大人が待つべきだ。そもそも人間は無気力になりにくいと言っています。
この本を読み終えて、改めて想ったことは、地頭塾は子どもたちの居場所として、子ども本来の元気を取り戻し、社会に送り出せる場所にしたいということです。
遊ぶのもよし、勉強するもよし。学校に復帰するのもいいですし、ここでゆっくりと他者との関わりの中で自分を見つけてもいいと思っています。
塾長はそもそも勉強することが好きで、算数や数学の良問をしょっちゅう塾生たちに解かせているのは、学ぶ楽しさを伝えたいという想いがあります。わからない問題が解けた時の快感というものを多くの子どもたちに感じてほしい。不登校でも、塾で新しい友達を見つけ、一緒にゲームをしたり、外をかけて遊んだり、そういう遊びを通じた他者との関わりの中で自分という人間を見つけてくれたらいいなと考えています。
最後に大人の方々へお願い
地頭塾は、子どもたちが元気になるのをたっぷり時間をかけて待ちます。
ですから、保護者の方々、先生方、義務教育の9年間が確かに大事な時期であることは重々承知をしておりますが、どうか彼らを長い目で見守ってはいただけないでしょうか。
人生100年時代、いつからだってスタートをやり直せると私自身信じております。
学校だけでなく、社会で活躍できるその日まで。
地頭塾 塾長 より