いま、非認知能力というワードが国内外から多くの関心を集めています。非認知能力を高めることは学習面にも大いにプラスの影響があると聞きます。書籍『自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』でとても詳しく解説していましたので、まとめていきたいと思います。
非認知能力とは
簡単に説明すると、「数値化できない能力」を非認知能力といいます。
これまで、能力は測定できることが前提となっていました。例えば、○○テストや○○検定、○○測定といった方法で数値化できるものでした。しかし、近年の研究では、測定できない力も能力として位置づけようという動きが出てきました。このように、数値化できる能力を認知能力、数値化できない能力を非認知能力と呼ぶようになりました。
本書では、非認知能力を以下の3つと定義しています。
- 自分と向き合う力
- 自分を高める力
- 他者とつながる力
もう少し詳しく説明すると、「自分と向き合う力」は自制心や忍耐力、回復力などの対自的で維持・調整系能力群に分類されます。「自分を高める力」は意欲や向上心、自信、自尊感情、楽観性などの対自的で変革・向上系能力群に分類されます。そして、「他者とつながる力」は共感性や協調性、社交性、コミュニケーション能力などの対他的で協調・協働系能力群に分類されます。
非認知能力は「自分」で伸ばす力
本書では、非認知能力は自分で伸ばすものであり、他者から与えられるものではないと明確に述べられています。
例えば、親が子どもに忍耐力をつけさせたいと願っても、その力をつけさせることはできません。非認知能力は本人の意志と努力によって伸ばされるものだからです。
親や周囲の大人は、子どもに非認知能力を身につけてもらいたいと考えますが、それを実現するためには本人の意識を高めることが重要です。具体的には、子どもを褒めたり叱ったりすることで「価値の共有」を行います。褒められたことは「価値があること」として、叱られたことは「価値のないこと」として認識されます。こうしたプロセスが非認知能力の向上に繋がります。
また、非認知能力レンズを使うことで、子どもの行動を評価し、適切なサポートを行うことができます。
- 自分と向き合う力レンズ:困難な状況に対して我慢したり、気持ちを切り替えたりする姿を見つける
- 自分を高める力レンズ:意欲を持って挑戦する姿や楽しそうに取り組む姿を見つける
- 他者とつながる力レンズ:助け合いや励まし合いの行動を見つける
こうした視点で子どもの行動を見ることで、褒めるポイントや叱るポイントが明確になります。
非認知能力を伸ばすための「仕掛け」
非認知能力を伸ばすためには、本人の意識が重要ですが、その体験プロセスに仕掛けを取り入れることも効果的です。
例えば、子どもに異文化への興味を持ってもらいたい場合、世界地図を壁に貼ったり、外国のニュースに触れさせたりすることで、自然に興味を持たせることができます。こうした工夫が成功すれば、子ども自身が意欲的に学び始めるでしょう。
非認知能力をアセスメントするとは?
非認知能力は数値化できないため、評価が難しいと思われがちですが、適切な方法を用いれば評価は可能です。本書では、非認知能力の評価をアセスメントと呼び、現状把握と改善方針の立案に役立てることが重要だと説いています。
アセスメントには、非認知能力を具体的に言語化し、構造化することが求められます。「目指す子ども像」を具体的な行動レベルにしていく「チャンクダウン」や、具体的な行動から共通点を見出して抽象化する「チャンクアップ」が効果的です。これらの手法を用いて、具体的な行動指標を作成し、アセスメント項目として構造化するのです。
この部分は概念をロジックに組み立てながら、実際の具体例をもとに実践したほうが理解できると思うので、興味のある方は本書『非認知能力を伸ばすコツ』にて深く読み込むことをおすすめします。
相互主体的な学びへ
相互主体的な学びとは、教師や親が直接教えるのではなく、仕掛けを用いて子ども自身が主体的に学ぶことを促す方法です。教師が教える主体となり、生徒が受け身になるのではなく、子ども自身の探求心を引き出すことで深い学びを実現します。
例えば、地頭塾では、生徒一人一人の性格や興味、家庭環境に合わせた個別最適な仕掛けを探し続けています。子どもが本来持っている内的な動機に基づいた学びが、真の自主学習につながると確信しています。
このように、非認知能力を伸ばすためには、本人の意識と周囲のサポートが重要です。本書『自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』は、具体的な方法や実践例を豊富に取り上げており、ぜひ一読をおすすめします。