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書評『塾を学校に』

本書の過激なタイトルに引かれて手に取ってみたところ、出版が2000年とあったので、ブログ用に読むのは時代錯誤かなと思いました。しかし、1980~2000年の教育問題も20年以上経った現代もその課題は解決しているとは到底思えませんでした。本書は少し古い本ではありますが、保護者の方、また抵抗があるかと思いますが、学校関係者の方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。本書『塾を学校に』の大筋と印象的だった部分をまとめてみましたので、関心のある方はご覧ください。

学校って何?

タイトルから推測されやすいような、学習塾が公教育である学校と同じ権限を持てるようにすることを訴えているわけではありません。塾と学校を競わせようというのが本書の趣旨となっています。

次の文章はインターネット上に当時「登校拒否の理由」として書き込まれたある中学生の声です。

「何のために学校に行くかわからないから。別に友達がいないわけじゃないんだけど、親友と呼べる人はいないから。だからよくわからなくなって少し考えようと思った。考えてみたけれど何も思いつかなかった。ただわかったのは、ぼくは学校に行く必要がないということ。学校へ行ったら、なんかバカにされたカンジがしたし…。だいたい学校ってなに?勉強のため?友達をつくるため?自分のため?人間ってそんなにえらい動物なのかな?いっそ人間なんて滅べばいいのに、と思った。でも笑顔で学校に行ってる人がうらやましいと思った。ぼくもあんなふうに学校へ行きたいとあこがれた。それでも学校の存在じたいがわからないぼくは、学校というものがわかるまで学校へは行かない」

きっとこの生徒は「学校へ行く意味」を探しているのでしょう。国(文科省)も学校も家庭でも学校へ行く理由を一応は提言しているだろうし、社会的にも学校に行くのは当たり前で、行かない(行けない)理由は様々あり、その問題解決をしなければならないという声が多い気がします。しかし、「学校へ行く」という当たり前をちゃんと子ども本人が理解できるように教えられているのでしょうか。

現在でも不登校(年間30日以上欠席する者)が年々増えており、私が住む福島市は昨年、不登校の児童生徒は759名(前年度比22%増加)でした。全国でみると当時13万人だった不登校生徒は現在30万人を超えています。

国は学校へ行かない(行けない)理由を調査して、データで示すことは毎年行われているようですが、学校へ行く意味を真剣に教えている学校や家庭はどのくらいあるだろうかと考えさせられます。また、現在普通に学校に通っている生徒の中にも、学校へ行く理由を理解して通っている生徒はどのくらいいるのでしょうか。

塾を中心とした教育改革論

いま、小中高の多くの学校が「意味もなく長時間子どもを預かる箱」と化しており、もはや抜き差しならない状態になっています。しかし、身動きしようにもできないのか、もしくは身動きする気がないのか、学校は自分の力で変革できないでいます。

学校は本来学ぶ場所です。もっと言うと、学問や人間関係を学ぶ所であると言えます。しかし、当時から行く価値のない学校が存在しているという意味で、本書では学校を(むしろ学校制度を)批判しています。(もちろん頑張っている学校や先生は一生懸命応援しています。)

はっきり言って、激しい競争社会の到来に学校関係者は本当に対応できるのか疑問です。実社会に出て行くまでの準備をする場所としては、学校はそれ自体が競争にさらされていない、まさしくお役所機関であるからです。対応がきちんとできようが出来まいが潰れることがないのです。彼ら自身が激しい競争社会とは無縁の世界に居座り続ける限り、子供に競争の厳しさを教えろというのは間違っているのではないかと思います。

当時(1990年代)は、教科書の内容は薄くなる一方で、ゆとり教育の名のもと、競争することを学校現場から排除してきました。学歴社会の終焉は、一生懸命勉強しなくてもいいということではなく、学力以外の専門性や飛びぬけた才能や努力をより必要とされる社会のことだと思います。学校という場所が学歴社会の終焉に合わせ、個を最大限伸ばせるような教育機関として機能しているかどうか、生徒にとって学ぶ場所になっているかどうか。

もちろん、学校ばかりを批判するのではなく、教育委員会や文科省にも問題があります。また、各家庭においても学校に丸投げ状態、生徒に問題が起きた時だけ、学校や教師を厳しく批判する姿勢は変えるべきです。

さて、本書はすでに終わっている学校を改革するために(学校に目を覚まさせるために)、学校にも競争相手(塾)が必要だと説いています。

「学校」という温室の窓を全部開け放ち、競争の風に身をさらすのである。塾と肩を並べて、市場(マーケット)に選別されてみてはどうだろうか。

学校、特に公立学校も私立学校同様、生徒や保護者が選択できるようにしてはどうか(学区制の廃止)というのが、本書の提案です。きっと賛否両論があるでしょうから、読者の声を聞いてみたいですね。

学校に対する批判的な箇所を多く抜粋してしまっていますが、本書は教師たちの切実な声も多く書かれており、本来は知りえない教師や学校関係者の本当の姿や本音の言葉がかなりの分量掲載されています。

塾を学校にするためには

塾を学校にするということは、要は義務教育を公教育だけに任せるのではなく、塾、米国でいうところのチャータースクールで生徒の学力を担保できる必要があります。そのために学力国家検定という制度を作って運用することが必要です。

現在すでにある「中学校卒業程度認定試験」と「高等学校卒業程度認定試験」、「大学入学資格検定」を文科省主導のもとすべての生徒に受けさせることだそうです。自動車免許システムと同じように、何度でも受けられるようにし、そこに年齢的な進度を合わせる必要もありません。子供がそれらの資格を一つ一つ獲得していくときに、アシスト役として学校や塾が利用されるのが望ましい姿ではないでしょうか。アシスト役を選ぶのは参考書を選ぶのと同じように考えて良いのです。

なるほど、こういうシステムは確かにあっても面白いように感じますね。

要は選ぶ側(子どもや父兄)が自己責任で自分に合う所を選べばいいのです。いじめや学級崩壊なんかもなくなるでしょう。なぜなら嫌なら辞めればいいのだから。それを義務教育や学区制で縛り付けるからいろんな問題が生じるのだろう。

と、本書では考察していました。(ちなみに東京都品川区は学校選択制度をすでに導入しています)

品川区のような、もっと自由な発想で子ども側の選ぶ権利を尊重した学校が増えてくることを私自身も期待しています。そして、地頭塾がフリースクール併設の学習塾として、福島県初のオルタナティブスクールとして認知されていくよう努力していくつもりです。


興味を持たれた方は、ぜひ『塾を学校に』を書店で手に取ってみてください。新しい視点を提供する一冊です。

子供心理・チャイルド心理資格取得講座卒業・修了証明 子供心理カウンセラー®資格資格認定証

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